昨年の12月にお問合せを頂いたお客様。
そのお客様は年内で仕事を引退されるとのことで、
「これまでずっと名刺を持ってきたので、無くなると心もとないんです（笑）」と照れくさそうにお話しされていました。
そこで引退後に自己紹介程度に使う名刺を活版印刷で作って欲しいとご依頼をいただきました。

お客様は、ただただ「和」が好きなんですとおもむろに財布を取り出し見せてくれたのは、
革に漆で「波うろこ（多分）」の模様をつけた伝統工芸品の財布で、
熟練の職人さんの手作りで珍しい物だと、財布について熱く語っていただきました。

そんな「和」が大好きなお客様。
新たに仕事を始めるという事もないそうなので、会社名も肩書きも連絡先もなしの
名前だけの活版名刺をデザインから作成させて頂きました！

文様は「麻」の葉をモチーフにした、古来から邪気をはらう魔除けの意味がある「崩れ麻の葉」。
その文様を枯山水の砂紋をイメージし、流れるようなカーブで名刺を縦に分断し、
空間的な「間」をとったデザインにしました。

名前の下には頭文字の「た」の落款を入れアクセントをつけました。

驚きは、繊細な文様が活版印刷で潰れずに再現できたことです。
これも弊社の印刷工が絶妙な印圧で仕上げてくれたからです。
用紙も「仙貨紙」という柔らかくしなやかな和紙を使用し「和」を演出する事ができました。

先日お客様納品した際に、「一枚一枚大事に配ります」と大変喜んでもらえました。

お客様の要望にお応えしながら作成する事は、発見や驚きもあり、
今回もまた活版印刷の可能性について大変勉強になりました。

「制作のキロク」に事例が掲載されていますのでそちらも是非ご覧ください！
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山添／大友D