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野性を感じる紙!?~竹尾さんの新商品 ワイルド-FS~

最近、朝方の冷え込みが厳しくて布団からなかなか出れません。
先日、ヒーリング効果のある音楽を流せば、心地よく覚醒できると聞いたので試してみたのですが、
5回くらい鳴るはずのスヌーズをフル無視して爆睡してました。ウケる。

寝起き×「サラ・ブライトマン」=Time To Say Goodbye(深い二度寝へ)。

身をもって知りました。営業部の田中です。

さて、今回は昨年12月に発売された、株式会社竹尾さんの新商品「ワイルド-FS」を紹介します。
”活版印刷に向いている部分・向いていない部分”など、印刷屋目線での感想も含んでいるので、ご使用を検討しているデザイナーさんなどのご参考になれば幸いです。

ワイルド-FSとは?

0竹尾印刷見本10

ワイルド-FS
インパクトのある厚さと手触りの厚物ファインペーパー。
野性味あふれるラフな質感は、活版印刷や箔押し、カード、名刺などで強い印象を与えます。
35%コットン配合です。 (引用元:竹尾(株)ワイルド-FS  紹介ページ

実際に紙に触れた感想としては、竹尾さんの紹介文にあるように、”インパクトのある厚さ””野性味あふれるラフな質感”が特徴の紙ですね。

 

厚みに関しては、電子ゲージで測ってみました。

斤量(四六判換算) ゲージ上の厚さ 備考
220kg 約0.6㎜ 220kgのみ表面加工により印刷適性が上がっています。
387kg 約1㎜ 名刺に使えるギリギリの厚みかと。(一般的な名刺入れだと2~3枚が限度)
761kg 約1.9㎜ コシがしっかりとした極厚紙なので、重厚感のあるDMやポストカードができそうです。

0竹尾印刷見本8

質感に関しては個人的な感想として、和紙のような風合いも持っており、”フリッター”に似ているように感じました。
フリッターが「ふわふわ」「もこもこ」とした印象であれば、ワイルドは「がさがさ」「ごわごわ」といった印象ですね。

0竹尾印刷見本9
斤量もフリッターであれば薄めの紙がありますし、ワイルド-FSであれば極厚の紙がありますので、好みの厚さやテイストを選べるようになり、デザイナーさんにとっては表現の幅がさらに広がるのではないでしょうか。

 

紙見本の写真+感想(良い点・気になる点)

気になる印刷適性については、竹尾さんの印刷見本を用いて見ていきたいと思います。

0竹尾印刷見本1

竹尾さんの紙見本は、いつも素敵なデザインが印刷されていて惚れ惚れします。
印刷されている紙見本は、写真の624kg(四六判換算731kg)のみでしたので、この厚みベースでの感想になりますがご容赦ください。


■文字

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紙のテクスチャが強めの紙は、ウェイトが細めの文字や線がビビッてしまいやすい(線に強弱がつく)です。
しかし、ワイルド-FSは紙が厚いのでしっかりと圧をかけた印刷が可能であり、細い文字でもキレイに再現されていますね。

一番薄い220kgには、表面加工を施して印刷適性を上げているとの事なので入手次第、確認してみたいと思います。


■ベタ適正

0竹尾印刷見本6

正直申し上げると、ベタ適正はあまり良くないように感じます。ベタ適正というかインキ乗り自体が良くないかと。
右の空押し箇所を見ていただくとお分かりになるかと思いますが、だいぶ圧力をかけて印刷されています。
活版印刷でこの仕上がりであれば、オフセット印刷はさらに厳しい仕上がりになりそうな印象。

ちなみに商品紹介ページでは、”印刷が広範囲にわたる場合は、予めニス引きをすることを推奨します。”と記載されています。

0竹尾印刷見本5

線の再現性に関しては、空押しを見る限り若干のビビりが出ていますが、キレイに入っている方だと思います。
しかし、インキかすれが生じており、結果的にビビっているように見えますね。

ただワイルド-FSの紙質に問題がある、というわけではなく、テクスチャが強い紙は往々にしてこのようになってしまいます。
使用をご検討の際は、類似の紙でも同様の問題が生じやすいということを念頭に置いて頂ければと。

また、逆にかすれを表現として用いれば、1枚1枚の表情が異なる印刷物を作成することも可能です!
↓の事例では、同じようにかすれ易いハーフエアを使用しておりますが、それを逆手にとったポストカードを制作しております。

ソラのように1枚1枚表情の変わるモノ

 

自社で刷ってみた感想

現在、制作中である新サービスの試作として、ワイルド-FSを使用しました。

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”太めで大きな文字+小さな文字”という、すこしクセのある印刷内容。
写真のものは、かすれがなく、綺麗に”印刷は”出来ています。

しかし、かすれがでないようにしっかりとインキを盛り、強烈な圧をかけて印刷したため、版の型(四角い枠のようなもの)が出てしまいました

0ワイルド

 

ワイルド-FSを使う場合は、このように版のフチが出てしまわない様に大判の版を作成した方が良さそうですね。

まとめ

全体的な感想としては、

・荒々しくがさついた手触り、紙の個性が強いため、名刺やDMに用いると強い印象を与えられそう
・しかし、かすれが生じやすいため、ベタ印刷や中範囲におよぶ印刷は避けた方がよいと感じます
・かすれを表現のひとつとして用いるのであれば、非常に魅力的な紙

私個人としては、こういったクセのあるテクスチャの紙は、”This is 紙!”とガッツリ感じられるので大好きです。
この紙に限らず、”紙の個性の強さ”と”印刷適性”はどうしてもトレードオフの関係にあると言えるので、クライアントの意向や用途によって上手く使い分けるとトガったものが出来るでしょうね。

雑貨屋さんやコーヒーショップのショップカードや、オーダーメイドでモノづくりをされている職人さんの名刺など、「オシャレ感」「手づくり感」を醸し出したい方に向いているのではないかと思います。

今後、活版名刺ドットコムのラインナップに入れる可能性もございますので、その際は是非一度ご検討ください!