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改めまして「おみく字」のご紹介

お久しぶりです、店舗担当の山口です。

本日、産経新聞社様の夕刊にて弊社山添をご紹介いただきました!
先月末頃に何度か取材をしていただき、とても熱心にお話を聞いてくださいました。

 

 

印刷と共にあり続けた会社のこと、活版印刷と活字、そして二度の震災を乗り越えた『おみく字』についてなど…
丁寧に取り上げていただき嬉しく思います。ありがとうございます!

『おみく字』は以前のよ~いドン!でも特集いただきました。
近頃こんな風にメディア等で特集していただく機会が増えましたので、
改めて、そんな『おみく字』について山添のブログでも少し詳しくご紹介しておこうかと思います。

THE LETTER PRESSのブログにはすでに同じ内容を載せていますので、
そちらをまだ読んでないよという方、最近知ったよという方はぜひぜひお付き合いくださいませ~!

 

 

…その前に、まずは「おみく字」発売日のお知らせ。
(毎月一度、オンラインストアでの販売があります!)

■5月の予定
TLP ONLINE STORE:5月11日(土)~15日(水)  ※購入制限お一人様2個まで

■その他イベント販売
NANIWA PEN SHOW 2024:6月1日(土)
芝川ichi:6月8日(土)

・THE LETTER PRESSの店舗では常時販売しています。
・6月のオンラインストア販売日は8日(土), 9日(日)を予定しています。

 

 

おみくじ誕生まで…

 

2018年6月、大阪府北部地震が発生しました。

関西圏では、阪神淡路大震災以来の大きな地震です。幸い社員の自宅や会社には大きな影響はなかったのですが、出社すると崩れ落ちた活字が目に飛び込んできました。

写真はごく一部の様子、どうしよう…とみんなで困り果てました。

 

 

 

活字は錫・鉛・アンチモンの合金で出来ており、皆さまの想像よりも柔らかい金属です。

これまでは活字組版で名刺を印刷することもありましたが、今後も受注を受けるには、落ちてしまった活字に欠けや傷がついていないかをひとつずつ印刷して確認する必要があります。印刷してみて使えなければ、「必要な分だけ購入すれば良いのでは?」と思うかもしれませんが、実は活字の大きさは地域ごとに若干異なり、現存する活字鋳造所(主に関東方面)と山添の活字を組み合わせるのはとても難しいのです。

「棚に戻すだけでもしてみようかな?」ということも考えましたが、阪神淡路大震災の時より多くの活字が落ちてしまったこと(推定40万個…)や、当時のように植字工(活字を拾う専門の職人)がいないので、素人が戻すには気が遠くなるほどの時間がかかってしまうこともあり、諦めることにしました。

弊社では、金属凸版を使って活版印刷をしているので、活字の出番がなくても仕事を続けることができるのも理由のひとつです。(ちなみに、阪神淡路大震災のときは、植字工が仕事終わりに約一年かけてコツコツと戻したそうです…)

 

 

こちらはよく使う文字がまとめられた棚です。本来は漢字の部首ごとに並んでいます。

日本語活字は、ひらがなカタカナ常用漢字を合わせて2,228文字が基本のセット。
名刺で使う場合は、各1文字では足りないので5個くらいはストックがあります。さらに、人名用漢字(斉藤・斎藤・齋藤・齊藤など)にも対応できるよう更に多くの活字を揃えておく必要があります。文字の大きさ違い、書体違いなども対応することも考えると、膨大なボリュームになります。

 

THE LETTER PRESS店舗 (右上:日本語活字 / 右下:木活字 / 左:欧文活字)

英語の場合は、アルファベットの大文字・小文字を含む52文字で足りるので、ひとつの木箱に収まります。
元々活字は中国発祥で、早いうちに日本にも伝来していたのですが、膨大な活字を準備する技術(当時は手彫りの木活字が主流)や手間、草書体のような繋がった字を再現できないという理由もあり、アルファベットを中心とするヨーロッパ圏の方で技術が成熟されました。圧倒的に労力が違うので納得です…

欧文活字の場合は、必要な活字の箱を1つか2つ取り出せば作業が出来るので、上向きに収納されていることが多いですが、日本語活字の場合は作業効率を重視して、地面と垂直に棚が配置されています。「日本は地震が多いのだから対策をすればよかったのでは?」という声も聞こえてきそうですが、活版印刷自体が衰退していく傾向にあったので、あまり考えられることもなかったのでしょう。

当時、社長がSNSなどで現状を伝えたところ、有難いことにお手伝いのお声がけもいただきました。感謝の気持ちでいっぱいでしたが、小さな会社に人が集めれば通常業務の継続が難しくなってしまったり、作業終了までに何年もかかる見込みなので、最後まで遂行することが困難と判断しました。普段触れている私たちでも一文字戻すのに数十分かかります。部首ごとの配列が難しいのと、3号,5号など絶妙な活字の大きさの違いは、判別するのにかなりの時間がかかります。

 

 

ここでやっと、おみく字の誕生に繋がります。

震災から少し経った頃、ちょっとした遊びで崩れた活字の中から”今日のラッキー漢字”を社員同士で探していました。それを見た社長が「おみくじになりそう」とひらめいたそうです。
元々は全ての活字を金属スクラップにして再利用するつもりでしたが、震災でも落ちずに棚に残った”運のある活字”たちをおみく字にして、催事に持って行ってみようかという話になりました。

そして、誕生した「おみく字」についてツイートしてみたところ…

なんと1.2万のリツイート、4.6万いいねをいただきました!
共感してくださる方がたくさんいらっしゃって、とてもあたたかな気持ちになりました。

その中には、もちろん「おみく字を購入したい」というお声も。
とはいえ、社員10人ほどの小さな会社で各部署1名(印刷担当のみ2名)で業務にあたっているので、「おみく字」を作る余裕があるのは当時のTLPスタッフとパートさん1名のみ。
さらに、オンラインストアの発送業務も同時対応となると、中々ハードな作業でした。
当時のサイトエラーでご迷惑をおかけしてしまったお客さま、本当に申し訳ございませんでした。

今では、より楽しく快適にお買い物をしていただきたいと新しいサイトを作ったり、引き出しの指定などのオプションをつけたり、様々な工夫をしています。

 

ONLINE STORE

 

オンラインストアでは、実際に使用している什器の引き出しを指定することが出来ます。

なのでまるで店頭で、ご自身で選んだかのような気持ちでお買い物をしていただけます。元々は活字組版に使うコミや罫線を収納していた棚なので、そこに書かれていた「半」や「倍」などの漢字を引用して、より活版の雰囲気を感じていただけるようにしてみました。

時々「漢字は指定できますか?」というお声もいただきますが、こちらはかなり難しいです…
ここまで読んでくださった方は想像ができるかと思いますが、何万もある活字の中から一文字だけを探すのには、相当の時間がかかるのです。たまたま見つかればラッキーですが、全てのリクエストにお応えしてしまうと日が暮れてしまいそうで…私たちもご希望に応えたい気持ちでいっぱいですが、どうかご理解いただけますと幸いです。

 

(左:2023年 / 右:2024年)

オンラインストア限定で、活版印刷のお礼のカードも同封しております。

対面でおみく字や活版印刷の魅力についてお伝えすることができないからこそ、直接見て触って活版の良さを感じていただきたいなと気持ちを込めています。新バフン紙に赤金のインキを組み合わせて、活字に合うようなレトロな雰囲気に仕上げています。


■ONLINE STORE

THE LETTER PRESSのオンラインストアでは、毎月第二土日に期間限定で「おみく字」を販売しています。
ただ、次回の販売日のみ5月11日(土) ~ 15日(水)まで少しだけ期間を延ばして販売させていただきます。ご興味がある方はぜひご覧ください。また、店舗では常時販売していますので、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りくださいね。

 

今後の販売について

 

 

あと少しで、震災から丸6年が経ちます。

会社の片付けも進み、おみく字に使える活字も少なくなってきました。
これまでに、おみく字として約2000個以上の活字を皆さまにお届けしたのではないかと思います。何十年も会社で一緒に過ごしてきた思入れのある活字を、大切にしてくださる方にお届けできたことに、社員一同感謝しております。

時期は未定ですが、今後は活字の在庫がなくなり次第、販売を終了する予定です。
それまでは、少しでも多くの方の手に渡るように、オンラインストアでは購入制限を「2個」とさせていただきます。

それでは皆さまと、ご縁のある活字が巡り合いますように願っております。