最近、名刺やショップカード、ウェディングアイテムなど、活版で印刷された物をよく目にしませんか?
この数年で知名度が非常に上がっており、お客様から
『印刷にあまり詳しくないのですが、活版がちょっと気になってお電話しました』
といった、お問合せいただくことも増えています。
そんな中、お客様とお話ししているときにあることをよく感じるんですよね。
それは、”用紙選びで迷って、選びきれない人が多い”ということ。
よくあるご相談として、
- 凹凸がハッキリとついたメリハリのあるものを作りたい
- あえてカスレを出して、レトロ感を出したい
- 上品なデザインに合う紙を使いたい
- 色をしっかり出したいから、発色の良い紙がいい
など、挙げればキリがないのですが、このようなご相談をよく受けます。
活版名刺ドットコムでは、活版印刷と相性が良い紙を数ある紙の中から厳選し、
さらに紙サンプルを初回無料でご用意しており、気軽に手に取って見ていただけるようにしています。
常備紙として採用するかどうか、慎重に紙の選別をしているのですが、
印刷において”紙”というのは非常に大事な要素ですよね。
そのため、さまざまなデザインやニーズにお応えできるようにとなると、
どうしても20種類以上(カラーバリエーションや厚みも含めると100種以上!)は必要になってしまいます。
しかし、紙に限らず普段の買い物でもそうですが、
”選択肢が多すぎるが故に、決めきれない”ことってありませんか?
そこで今回、紙を選びきれないお客様に向けて、
活版印刷のプロがイチオシする紙をお教えできればお役に立てるのでは?と思い、
スタッフ7名に以下のアンケートを取ってみました。
- オススメの用紙
- オススメする理由
- その紙に合うデザイン・業界
- デメリット(あれば)
ということで今回は、これまで多くのお客様のご相談や、活版印刷物を見てきた私たちが
オススメする用紙をご紹介いたしますので、ぜひご参考いただければと思います!
活版名刺ドットコム店長が選ぶオススメの紙は・・・
活版名刺ドットコム店長(通称:てんちょ)
店長歴6年の彼女がこれまでに担当した活版印刷物は、なんと6,000点以上!
誰よりも活版印刷に触れてきたてんちょがオススメする紙はコチラ
クレーンレトラ
クレーンレトラをオススメする理由
個人的なお話ですが、初めてつくった名刺が”クレーンレトラ”を使ったものなので、思い入れのある紙。
色んな紙に印刷してもらいましたが、やっぱりこれが一番きれいでしっくり来ます。
コットン100%の紙なので大変ふかふかと柔らかく、ずっと触っていても飽きない気持ちよさ。
印圧をかけたときの凹み・陰影が最高に綺麗に出ます。
活版印刷をするには程よい厚みがあるので、印刷圧弱め・強めで大きく表情が変わる。
クレーンレトラに合うデザイン・業界は?
個性的すぎる紙ではないので、「かすれ・発色」だけ気にしてもらえれば、
どんなジャンルにも対応できる紙だと思っています。
紙から受ける個人的イメージは、「優しい」「清純」「柔らかい」・・なので、結婚式の招待状などと相性良さげです。
実際に私も作り、なかなか評判が良かったのでおすすめです。
クレーンレトラを使用する上で気を付ける点
かすれやすく、色が沈みやすい点。
”かすれ”に関しては活版の味だとも思っています。
1枚1枚、かすれ具合が異なるので、
下記ページの”かすれ”にきゅん!と来たあなたに、”かすれ”はデメリットではないですね。
スミで印刷される方には問題ないお話ですが、特色指定でこだわりたい方にはもっと発色の良い紙をおすすめします。
社長が選ぶオススメの紙は・・・
活版名刺ドットコムの運営元である”有限会社山添”の2代目社長。
幼少の頃から、当社の印刷工場を遊び場代わりにして育ったため、根っからの紙モノ好き。
印刷・用紙に関して幅広い知識を持っている社長がオススメする紙はコチラ
ハーフエア
ハーフエアをオススメする理由
活版におすすめの紙と言えばハーフエアが鉄板でしょ~。
優しい肌触り、ナチュラルなカラー、適度な厚さ。
ほどよい発色に、いい風合いのかすれ。
何と言っても活版の圧が一番綺麗に入ると思います。
色々「過ぎない」ところが好きです。
両面印刷する場合は裏への影響が気になるので特に厚くて柔らかい紙をすすめることが多いですが、
名刺で使う場合は、名刺ケースに少量しか入らず使い勝手が悪い部分があります。
その点ハーフエアは一般的な名刺の紙より少し厚いだけでも、
印刷圧を吸収してくれる空気を含んでいて、思いきり押さなくても両面いい感じに仕上がります。
気張らず、定番、いい感じ。
ハーフエアに合うデザイン・業界は?
デザイン・カラーともにシンプル、ナチュラルなもの。
ハーフエアを使用する上で気を付ける点
デメリットは柔らかいので折れやすい、強度に欠けるところです。
柔らかさは長所でもあるので、納得して使うのみです。
個人的には厚さのバリエーションがないところがデメリット、、というか不満です。
さらに厚いのがあればもっと用途が広がるのに。メーカーさん作ってくれないかなーと。
営業が選ぶオススメの紙は・・・
活版印刷がきっかけで山添に入社し、営業部として8年目。
活版名刺ドットコムの”元”店長だったりします。
印刷のプロとして、様々なご相談に乗ってきた私がオススメする紙はコチラ
クレーンレトラ
クレーンレトラをオススメする理由
個人的には活版印刷との相性No.1!
コットン100%の紙なので、厚みをもちながらも、コシが柔らかく素朴な印象が好きです。
触るだけで、「これは・・・良い紙・・・!」と分かるぐらい、優れた質感をもっています。
なにより、凹みをしっかり出しながらも、裏面に影響が出にくい紙ですね。
また、この紙を生産しているアメリカの製紙会社「クレーン社(Crane&co)」は、
ホワイトハウスのオフィシャルペーパーなどを作っており、
紙自体に由緒ある格式高いブランドパワーがあるというポイントもGOOD!
名刺交換をする際の会話ネタとしては、インパクトがあってちょうどいいです。
クレーンレトラに合うデザイン・業界は?
いい意味でクセがない紙なので、品のあるものからポップで可愛げのあるデザインまで、
どんなデザインにも合うと思います。
ただ、すごく個人的にですが、日本語を使用したデザインよりも、
英語のみで作られたデザインの方がハマる気がしています。
クレーンレトラを使用する上で気を付ける点
店長と同意見となりますが、かすれやすい点や、色が沈む点ですね。
コーポレートカラーなどシビアな色を求められる場合は、スノーブルがオススメです。
アートディレクターが選ぶオススメの紙は・・・
テキン(小型活版印刷機)を2台も個人的に所有しているほど活版マニアのアートディレクター。
新しいものより、古き良きものを何より愛するADがオススメする紙はコチラ
グムンドコットン
グムンドコットンをオススメする理由
ドイツのプロダクトが好きなこともあり、創業190年近くもの歴史を誇る、
大量消費の紙とは一線を画する高級製紙メーカー「GMUND」が作るこの紙がお気に入り。
アカデミー賞の授賞式や高級ブランド、世界中のクリエイターたちが敬意を払うほどの品質と品格、
圧倒的な歴史背景、紙に対する取り組みも含めて注目しています。
紙の事はまだまだ勉強不足ですが、
この紙の本当の魅力が分かるようになりたいという思いも込めて、この紙を選びました。
グムンドが使われた印刷物をみても、凹みが非常にシャープだし、おもて面のソフトで繊細な肌触りも魅力。
グムンドに合うデザイン・業界は?
職業でいうと、洗練されたデザインを得意とするデザイナーやフォトグラファー。
他には、堅実な印象の弁護士さんなどにもお似合いかなと思います。
グムンドを使用する上で気を付ける点
発色が若干弱く(かすれ)感じられる。
これを自然の風合と捉えると、紙の良さを活かした最もナチュラルな表現とも言えるのではないでしょうか。
THE LETTER PRESSのスタッフが選ぶオススメの紙は・・・
活字を組むところから始める活版印刷や、すでに引退した古い機械を使った加工など、
さまざまな体験ができるショップ「THE LETTER PRESS」のスタッフ。
消しゴムはんこが好きで自らも作品を量産しているほど、モノづくりが大好きな彼女がオススメする紙はコチラ
スノーブル
スノーブルをオススメする理由
活版印刷×スノーブルは、とても上品に仕上がります!
微塗工紙なので、インキの発色が良くて、文字を綺麗に魅せることが出来ます。
入社した時に刷ってもらった名刺に使われていたのがスノーブルだったのですが、
明朝体の細い線幅の違いがきちんと出ていてすごく格好いいと思ったのを今でも覚えています。
それから、ベタが広範囲にあるデザインにもぴったりです。
色が綺麗に出るのはもちろん、かすれも少ないので思い描いたイメージに限りなく近い仕上がりになります。
へこみもしっかりと感じられるので、活版の良さも味わえるオススメの紙です。
スノーブルに合うデザイン・業界は?
落ち着いた品の良さがあるので、名刺のほかに招待状やショップカードに合いそうです。
デザインは詳しくないのですが、シンプルで綺麗め、もしくは格好いいデザインが似合うんじゃないかなと思います。
スノーブルを使用する上で気を付ける点
211kg、246.5kg、273kg、350kgの厚みは片面塗工なので、
表裏でインキの乗り具合や発色が異なる点は注意してください。
印刷職人(ハイデルベルグ プラテン)が選ぶオススメの紙は・・・
18歳から印刷業界に入り、活版印刷はもちろんのこと、
オフセットやシルクスクリーン印刷にも精通しているスタッフ。
さまざまな印刷・用紙に触れてきた彼がオススメする紙はコチラ
OKサンドカラー ※要お問合せ
OKサンドカラーをオススメする理由
発色が良く、色がハッキリ出る点が個人的に好み。
紙は淡い色と自然さが残る色調の紙に野菜の色をモチーフに染色した粒子を散りばめていて、華やかさをもっている。
また、紙色に野菜の名前が付いている点がユニークで気に入っている。(とまと・なす・きゅうり、など)
OKサンドカラーに合うデザイン・業界は?
紙自体に色のついた粒子が散りばめられているので、可愛らしいものやポップなデザインに合うと思います。
紙色の名前からも、野菜やフルーツを扱う業界に用いると面白いかも。(八百屋さんや、ジュースサーバー店など)
OKサンドカラーを使用する上で気を付ける点
全ベタを刷ると、せっかくの紙の色と質感が台無しになる。
※OKサンドカラーは、活版名刺ドットコムの常備紙にはございませんが、
お問い合わせ頂ければ別途ご対応させて頂きます。
印刷職人(コメット)が選ぶオススメの紙は・・・
印刷職人として忙しい日々を過ごしながらも、印刷で面白いことができないかと試行錯誤するアイディアマン。
つねに繊細な作業を求められ、誰よりもシビアに活版印刷と向き合っている彼がオススメする紙はコチラ
特にないです
というと何ですが、どちらかといえば刷る側の立場から言えば、
デザイン・版の仕上がり具合・指定の色・印刷圧・気候などの条件を踏まえた上で
なるべくベストなものを印刷するという基本姿勢の下で作業させて頂いてます。
なので、どれがオススメというよりかは、
出来上がった名刺をみなさまに「活版名刺っていいですよ」と薦めてもらえるような印刷を心掛けています。
あえて選ぶならば、先日てんちょのブログでも紹介した”カラープラン”は今までにないビビッドな色彩の紙なので、
いろいろ「遊べる」用紙になるかと思います。
***
以上、活版名刺ドットコムのスタッフがオススメする用紙をご紹介させていただきました。
- クレーンレトラ(2票)
- ハーフエア
- グムンドコットン
- スノーブル
- OKサンドカラー
- カラープラン(しいていうなら)
という結果となりました。
凹凸の綺麗さから発色の良さ、さらには紙自体のストーリーにまで掘り下げた話もちらほら出てきましたね。
もちろん、紹介した紙以外のものでも、魅力あふれる紙はたくさんありますので、
”紙を選ぶ際の一参考まで”ぐらいに捉えていただければと思います。
デザインのイメージにあった紙かどうか、
紙の厚みはどうか(厚すぎると名刺ケースに数枚しか入らないなどのデメリットもあります)、
真っ白な紙ではなく色がついている紙を使用するかどうか。
というように、こだわればこだわるほど深みにハマるのが、印刷物の悩みでもあり、面白さでもあります!
ぜひ、紙サンプルを取り寄せていただき、自分の目や手で紙の質感を感じながら、
イメージに合った紙を見つけてくだされば嬉しいです!
(営業部/田中)